BOMING

WATCH MOVIE(~14.8.22)

揮発性の女(熊切監督・2004)
この1週間で映画を11本借りてしまいました。

普段は洋画を観ることの方が多いのですが、最近、なぜだかは忘れましたが松田優作物語(漫画)を読んでいて、日本映画ももっと見てみようと思ったのがきっかけです。

借りた作品全部をまだ観れている訳ではないのですが、熊切和嘉監督の「揮発性の女」というのが、とても良かったです。
主演の二人も、全く華のあるタイプではないのですが、非常に演技派といいますか、どうにも。
本当のことがそこで起こっている、というようにしか思えないようなお芝居をするのです。
ぱっと見どこにでもあるような日常を描いているようで、それが少しずつねじれていく。狂気が垣間見える。

強盗犯が逃亡途中にガス欠した盗んだバイクを持って、未亡人が経営するガソリンスタンドにガソリンをもらいに来たところから物語がはじまります。
未亡人の女は、好いた惚れたなど遠い昔の記憶の淵に置いてきましたが?という風貌の、枯れた印象の眼鏡おばちゃん。
男にガソリン代を請求したところ、ふと視線の先の男の鞄から包丁が飛び出していることを発見してしまいます。
男はそのことに気づき、未亡人を包丁で脅し、自分をかくまうことを(暗に)要求します。

と、ここから奇妙な2人の共同生活が始まるのですが、一緒に暮らす、ということは、やはり、見ず知らずの他人であれ、2人の関係性もそれ相応に変わってゆく、ということでして。
恋、のようなものが、2人の間に芽生えはじめます。

関係性が変わってゆくと同時に、主演の2人の顔が、どんどん違って見えてくるのが、面白い。

時化たおばちゃんが、綺麗なおばちゃんに見え始め、あれ、なんか可愛いな…。なんて思いはじめてしまう。
これが演技である、というのはすごいことです。こういう風な人が本当にいて、ただそれを撮っている、というようにしか思えないから。

個人的に奇妙で面白かったのは、未亡人の女が風呂桶にフナ?を飼っていたこと。向田邦子の小説を思い出しました。
また、家を置いて飛び出すシーンで、(そういうシチュエーションの場合、家のことを誰でも少しは回想すると思うのだけれど)普通なら、なんだろう。ベッドなどのザッとみた部屋の感じを思い出すのかな?と思ったのですが、彼女はどうやら水槽に飼っていたウーパールーパーのことを思い出したようで、幸せそうにウーパールーパーに餌をやっている自分がフラッシュバックの映像シーンとして出て来て。そこがすごい好きだった。

揮発性とは、辞書で調べると液体の蒸発しやすい性質を意味する言葉だそうで、

じゃあ「揮発性の女」とはどういった意味なのだろう?
と考えたのですが、
本当はめちゃくちゃ女らしい部分を持っているそういう風には見えない女が、何かのきっかけで、そういったことには無関心を装い「私は一人で生きてゆけます」という仮面をかぶる。
でも本当は誰かに必要としてほしい、愛してほしい、寂しい、という気持ちが、薄〜い皮を1枚剥がした場所にはぶくぶくと溢れかえっていて。そんな意味なのかな。とか。考えてみました。